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知的探究研修2023 実施レポート 【ダイジェスト】

2023年12月、全国から24名の中高生が都内に集まり「知的探究研修2023」が開催されました。「世界最高レベルの知に触れる」をコンセプトに、普段の学校生活では出会うことの少ない世界トップレベルの研究者やオックスフォード大・大学院の学生や卒業生らとの知的交流を通して、自らの視野を広げる機会を提供するこの研修。本記事では、3日間の活動の様子をダイジェストでご紹介します。
 
※詳しい記事をお読みになりたい場合はこちらから(JTBのホームページにリンクします。)

中高生が世界最高レベルの「知」に触れ、視野を広げた3日間

全国の中高生が世界トップレベルの研究者やビジネスマン、オックスフォード大学の学生に出会い、自分の視野を広げる―。そんな「知的探究研修」が2023年12月25~27日の3日間、都内で開催されました。
研修は、東大で哲学を教える梶谷教授から物事を思考するプロセスから文章の書き方を学ぶワークショップに始まり、様々な経験しながら今を生きるビジネスマンや大学生らとの進路座談会&相談会、オックスフォード大の学生とのPBL型協働ワークショップ、と続きます。最終日には、東大の物理工学研究室の見学と世界屈指の研究者である齊藤教授との座談会、という内容で構成されました。
 
一般社団法人次世代教育ネットワーキング機構の理事である岡本尚也氏が中心となって実現したこの研修。初の開催だったにも関わらず、全国24名の中高生から参加申込みがありました。申し込んだ生徒はオンラインで行われた事前プログラムに参加した後、3日間の研修を通して学びたいことや目標をワークシートまとめた上で研修当日を迎えました。

〔1日目午後〕 東大 梶谷真司教授による文章ワークショップ

初日は、東京大学大学院で哲学を専門とする梶谷真司教授による文章ワークショップからスタートしました。全国から東大駒場キャンパスに集まった参加者の表情は皆どこか緊張ぎみ。グループに分かれて簡単な自己紹介を行った後、早速本題に入ります。梶谷教授が「書く作法ではなく、書く内容を見つけ、組み立てる方法を学ぶ」と位置づけるこのワークショップでは、教授の指導のもと「書くとは何か?」「考えるとは何か?」「いい文章とは?」について考えていきます。
〔文章作りの手順〕
①テーマを決めて問いを集める → ②問いを選んで書く材料を集める → ③発表して質問してもらいさらに材料を集める → ④ストラクチャー(構成)を考え直す → ⑤実際に文章にしてみる
「友だち」に関する3つの問い(例):友だちとは何か? 異性と友だちになれるか? 年の離れた人と友だちになれるか?
生徒たちはまるで自分自身と対話しているような表情で材料を書き出し、それをもとに文章を紡いでいきます。問いを立てたことで書きたいことが溢れてきたのか、ペンが一気に進んでいる生徒もいました。グループを超えた「質問ゲーム」では、初対面の生徒同士の距離も縮まり、和やかな雰囲気の中でワークが進んでいきました。

〔2日目午前〕 社会人パネリストによる進路座談会&進路相談会

2日目の朝、生徒たちは東京駅に隣接するリクルート本社で進路座談会と進路相談会に臨みました。進路座談会では、4名のリクルート社員と1名の起業家がパネリストとして登壇。それぞれが学生時代から今に至るまでの様々な回り道の経験談や進路を考える上で大切にしていること等を披露しました。その中の一人、リクルートの福田氏は京都大学文学部に入学したものの休学して世界一周。帰国後は法学部に転学し、留年して卒業。現在は社内にR&D(研究開発)組織を設立し、米国ミネルバ大学などとの連携プロジェクトに携わっています。有名な大学を出て有名な企業で活躍している大人が、ここに至るまで、必ずしも真っ直ぐな道を歩んできた訳ではないことに生徒は驚きつつも親近感を感じたようです。はじめに進行役の岡本氏から「昨日のワークを思い出して問いを立てながら話を聞こう」という指示があったこともあり、壇上のパネリストには生徒から沢山の質問が投げかけられました。座談会の後は、東京大学、慶応義塾大学に通う学生も加わり、一人のパネリストを数名の生徒が取り囲む形でグループに分かれて進路相談会がスタート。生徒からは、進路に関する悩みや受験勉強に関する相談が座談会以上に次々とパネリストに寄せられ、世代を超えた熱い対話が繰り広げられました。

〔2日目午後〕 世界屈指の名門大学・オックスフォード大の学生とのワークショップ

2日目の午後は、オックスフォード大学日本事務所でオックスフォード大の学生との協働ワークショップが行われました。参加生徒は3,4名ずつ7つのグループに分かれ、そこにオックスフォード大、大学院の現役学生や卒業生がメンターとして加わります。岡本氏から提示されたディスカッションのお題は、「What is commonsense/fact which have been hidden or undermined?」(隠されたり損なわれたりした常識/事実とは何か?)。ここからわずか2時間の間に自分たちでテーマを決め、インターネットで情報を収集し、分析結果をスライドにまとめて、全員がプレゼンテーションを行わなければいけません。しかも使用言葉は英語です。英語に自信のない生徒はそれを聞いてとても不安そうな表情を浮かべていましたが、ワークが始まるとオックスフォード大の学生が流暢な日本語を交えながらサポート。最終的には参加生徒全員が英語でのプレゼンを見事にやり遂げました。同時に、生徒たちは交流を通してオックスフォードでの生活に思いを馳せたり、日本人のオックスフォード大生に将来の自分を重ね合わせたりするなど、これまで自分の意識の外にあった世界にはじめて触れる瞬間を楽しんでいるようでした。

〔3日目午前〕 最先端物理工学研究室見学と東大 齊藤英治教授との座談会

研修最終日は、東京大学本郷キャンパスにある齊藤英治教授の研究室訪問です。工学部の建物内にある研究室フロアは、廊下ですれ違う先生のほとんどが世界トップクラスの研究者という、参加生徒にとってはまさに異次元の世界。なかでも齊藤教授は学術賞において国内最高の栄誉と呼ばれる日本学士院賞を受賞した、物理学において世界最高峰の研究者です。参加生徒ははじめに齊藤研究室の吉川助教から最先端の実験設備を丁寧な解説つきで案内してもらった後、齊藤教授や研究室メンバーとの座談会に臨みました。
生徒の質問に、穏やかな笑顔を浮かべながら一つ一つ丁寧に答える齊藤教授。
――――――僕が一番ワクワクするのは論文執筆前です。研究で新たな発見をすると、世界でこの情報を僕だけが知っているという期間があるんです(笑)。それを一度経験をするとやめられなくなっちゃいますね。
齊藤教授の人間味あふれるコメントに会場の生徒からは思わず笑みがこぼれます。理系志望の生徒や東大を目指している生徒はここぞとばかりに齊藤教授に質問するなど、この貴重な時間を最大限に活かそうとしているようでした。

まとめ

最後に、参加生徒一人一人に「修了証」が手渡され、3日間の研修は幕を閉じました。研修を終えた生徒の満足そうな表情からは、普段の学校生活では出会うことのない方々との貴重な出会いを通じて、自分の世界が広がり、将来への決意を新たにした様子が見て取れます。また、お互いに連絡先を交換する姿があちらこちらで見られるなど、研修を通して生まれた参加生徒同士のヨコのつながりも生徒たちにとって貴重な財産になりました。

研修中の様子
研修のコーディネーターを務めた次世代教育ネットワーキング機構理事 岡本尚也氏のインタビューと参加生徒の声は以下のページに掲載しています。ぜひ合わせてお読みください。

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